2017年8月現在、Netflixの有料会員は世界中で1億400万人を超えています。その中でも、特にNetflixを利用しているのは、ミレニアルズ世代と呼ばれる1980年代から2000年代初めに生まれた若者です。LendEduによる調査では、ミレニアルズの54%の人が家族や友人と共有でNetflixアカウントを保有している、34%の人が自分自身のNetflixアカウントを保有していると回答しています。Netflixはなぜミレニアルズ世代から熱く支持されているのでしょうか。


時間と場所に制約されずに 好きな番組を

Netflixがミレニアルズ世代に好まれる理由の1つに、「いつでも、どこでも視聴できる」という点が挙げられます。ミレニアルズ世代の中でも特に1998年以降に生まれた人達は、最初に持った携帯がスマートフォンである、いわゆるスマホネイティブ世代と呼ばれています。彼らは、主にスマートフォンの中でコンテンツ消費をしています。

 

従来のテレビ番組は、決まった時間に決まった番組を放送しています。しかし、Netflixを始めとする動画ストリーミングサイトは、スマホを持っていればいつでもどこでも、見たい番組を視聴することができます。時間と場所に制約を受けず、好きな時に好きな番組を見ることができることは、ミレニアルズ世代のライフスタイルに合致すると言うまでもありません。

 

ハリウッドを代表する制作陣がNetflixへ

Netflixは、過去に放送された国内外のドラマや映画、アニメに加えて、オリジナルコンテンツを配信しています。Netflixはオリジナルコンテンツを非常に重視しており、その制作にとても力を入れています。ミレニアルズ世代はこのオリジナルコンテンツを非常に好み、視聴する傾向があります。

 

Netflixはコンテンツにかける予算として約60億ドル(約6,600億円)を確保しており、そのうち約50億ドル(約5,500億円)が他社制作のコンテンツに対するライセンス費用だとされています。残りの約10億ドル(約1,100億円)がオリジナルコンテンツの制作に使われています。

Netflixのオリジナルコンテンツには、スティーブン・スピルバーグを監督に迎えたものや、レオナルド・ディカプリオを制作総指揮に迎えたもの、ブラッド・ピットやウィル・スミスが主演を務めるものなどがあります。ハリウッドを代表する名だたる俳優や監督が、Netflixのオリジナルコンテンツの制作・出演を行っていることからも、Netflixのオリジナルコンテンツの質の高さが伺えます。

 

また、2017年8月初めには、ディズニーがNetflixへのコンテンツ提供を2019年から停止すると発表。発表から1週間足らずで、Netflixはディズニー傘下のABCネットワークの大物プロデューサー「ションダ・ライムズ(Shonda Rhimes)」氏を引き抜くと発表しました。1週間足らずという早さで行った今回の決断からも、彼らがコンテンツ制作にどれほど力をかけているかが伝わります。

 

2017年2月末に行われた第89回アカデミー賞では、Netflixのオリジナルコンテンツが4作品計7部門でノミネートされました。Netflixは、オリジナルコンテンツのクオリティの高さで、他のストリーミングサイトと比較して、十分すぎるほど差別化が図れているのです。


LGBTQやフェミニズムなど、現代を色濃く反映

ミレニアルズ世代に好まれているオリジナルコンテンツとは一体どのようなものでしょうか?ミレニアルズ世代はそれ以前の世代に比べ、自分のセクシュアリティにオープンな傾向があると言われています。

 

世界的にLGBTQへの関心が高まっている中、アメリカのミレニアルズ世代のうち32%がLGBTQを自認している、または既存の性役割に当てはまらないと自認しています。ダイバーシティを色濃く反映するオリジナルコンテンツが多いことも、ミレニアルズがNetflixを支持する一因です。

 

例えば、「Orange Is the New Black(オレンジ・イズ・ニュー・ブラック)」は、Netflixオリジナルコンテンツの中の代表的な作品でミレニアルズ世代からとても支持されています。この作品は、舞台が女子刑務所であり、主人公は元々レズビアンという設定です。作中では、囚人たちがレズビアン関係を結んだり、抗争する姿を描いています。


Netflixより

 

また、1980年代のロサンゼルスを舞台に女子プロレスの世界を描く「GLOW」もミレニアルズ世代から人気です。このドラマでは、家庭に仕え、子供を産み、子育てを行うという女性像が世の中の主流であった1980年代を舞台に、そのステレオタイプの価値観をはねのけ、戦う女性の姿を描いています。女性の社会進出が進んだ現代社会の姿に似た、戦う強い女性像を描いていることがフェミニズムを支持するミレニアルズ世代に評価されています。


Netflixより

 

他にも、アメリカのティーンに大人気の歌手であり女優であるセレーナ・ゴメスが制作総指揮を担当した、「13の理由」もミレニアルズ世代から支持されています。世界的に人気なセレブリティが制作クルーにいることは、それだけでミレニアルズがNetflixを注目する理由となります。また、セレブリティの起用だけでなく、ストーリーの面白さも挙げられます。このドラマは、高校を舞台にし、ある女子高生の自殺をというきっかけをもとに、いじめや性差別といったテーマを扱っています。テーマや舞台が身近なものであることも人気の理由の1つでしょう。


Netflixより


徹底的に“パーソナライズ”されるアルゴリズム

Netflixが支持され続ける理由に「パーソナライズ」に力を入れていることが挙げられます。Netflixは作品を視聴した後に、「こちらもオススメ」、「あなたへのオススメ」、「○○を視聴した方にオススメ」という表示をし、他の作品の紹介しています。このシステムのアルゴリズムが非常に優れており、一度Netflixを利用した人の回遊率を高めています。

 

Netflixは配信するコンテンツ全てに、監督や出演者が誰であったか、ストーリーの方向性はどのようなものであったか、などのデータを付与しました。そのデータに基づいて、8万通り近い数に作品を分類しています。さらに、各ユーザーがどのようなタイミングで作品を見るのをやめるのか、どのような時間帯にNetflixを利用しているのか、検索履歴など、様々なデータを収集し、それらを総合的に判断してオススメ作品を紹介します。この膨大な量のデータ収集によってもたらされる精緻なオススメ機能が、ユーザーを引きつけ続ける理由の1つとなっています。

 

スラング誕生、そしてカルチャーへ

LGBTQ、フェミニズムを色濃く反映した質の高いオリジナルコンテンツ。ひとりひとりにパーソナライズされたアルゴリズムなど、ミレニアルズに支持される理由は多くあります。

 

Netflixがミレニアルズと密接な関係にあることは、あるスラングの誕生が物語っています。

 

「Netflix & Chill」(ネットフリックス&チル)という言葉は、ミレニアルズの多くの人達の中で理解され、認知されている言葉です。2014年頃から使われているこの言葉は「Netflixを見ながらまったりしようよ」という意味合いが転じて、セックスするための誘い文句として使われています。「Netflix & Chill」と印字された避妊具やTシャツが商品化されており、若者の間にこの言葉が浸透していることも分かります。


Netflix & Chillより

 


Netflix & Chillより

 

さらに、「Netflix & Chill」という楽曲まで登場。アメリカのラップミュージシャンErk The Jerk や B.O.Bが歌っています。Netflixはミレニアルズの生活に溶け込み、広く親しまれていることは言うまでもありません。

 

 

ミレニアルズとのコミュニケーションを考える上で、重要なことはNetflixにあるといっても過言ではありません。カルチャーとして根付き、ミレニアルズにとって特別なポジションを勝ち取ったNetflixは、今後どのように若者たちを楽しませるのでしょうか。Netflixの快進撃を、今後ますます注目したいものです。

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竹林広
Post Author

竹林広

1996年生まれのフリーライター。京都出身。慶應義塾大学文学部に在学し、人間科学を専攻。フリーライターの父を持ち、父の働く姿を見てライター業に興味を持つ。趣味は温泉と寺社仏閣巡り。