2018年末、メッセンジャーアプリ WeChat が大幅アップデートを行いました。2014年以来の大幅アップデートで、中国を中心に話題となりました。
WeChatは、中国・深センに本社を構えるTencent(騰訊)が2011年にリリースした無料メッセージアプリで、Weiboなどと並び中国最大人気SNSの1つです。

日本では中国版LINEと呼ばれ、LINEと同じようにメッセージのやりとりやタイムライン機能などが搭載されています。(WeChat公式サイトはこちら

 

今回のアップデートでは、UIの大幅リニューアルのほか、中国・Bytedance社(バイトダンス社)のTikTokを意識したと思われる24時間限定公開のショートビデオ共有機能「时刻视频(タイムカプセル)」や、友だちがいいね!した公式アカウント配信をまとめて閲覧できる「看一看(トップストーリー > WOW)」機能が新規で追加されました。

また、メッセージを見逃さないない全画面通知アラート機能や、乗っ取られた友だちのアカウントを代わりにフリーズしてあげる機能の追加も見られました。

現在、ダウンロードユーザー数が10億人を突破し、中国のスマホ所持者にとってなくてはならないアプリ・WeChatのUIリニューアルを紐解くことで、これからのグローバルスタンダードなアプリに必要なUIを垣間見ていきます。

 

中国全土が注目。リニューアル後、Weiboでトレンド入りし1日にして2.6億閲覧に。

WeChatがリニューアルされた夜、「WeChat ビッグ更新」や「WeChat を更新したことを後悔している?」といったキーワードが Weibo (中国版 Twitter)のトレンドに一気に上がり、一日と保たずに閲覧数2.6億、議論に参加した投稿も2.8万を超えました。実に中国全国が関心を持つほど大規模なリニューアルとなりました。

中国語でアップデートを意味する中国語「更新」という単語が名前に入っている中国イケメン俳優・林更新(Kenny Lin)はさらにこのヒットに乗り、「林更新后悔更新」(意味:Lin Geng Xin はアップデートを後悔している)のダジャレを投稿しファンではない人の間でも盛り上がりました。

アップデート直後は目立っていたネガティブコメントですが、炎上は時間とともに消え、リニューアルから数週間経つ今ではユーザーもそのUIに慣れたことが伺えます。

 

ここ数日、WeChat は恒例のオープンクラス(WeChat の事例・データレポート・今後の展開などを述べるイベント)を開き、そこでも今回のアップデートについて「WeChat は時代とともに更新しないといけない」と説明しました。

5年をかけて決心した今回のリニューアルは、WeChat がもっと前に積極的に踏み出そうとする決心も見れました。

 

ロゴやアイコンもリニューアル。

7.0 にアップデートされた WeChat のアイコンは薄い緑と更新され、ロゴサイズもよりキュートになりました。

さらにメイン UI カラーを白ベースに、機能アイコンが線画風に更新され、全体がもっとライトなイメージになりました。画面ヘッダーとコンテンツの区分が弱くなる代わりに、画面の一体感が強くなりました。

WeChat v7.0 (順番:トークリスト / 連絡先 / 発見 / 私 / WeChatペイ)

バーション7.0アップデート前にすでに公式アカウントフィードが改善され、そこからも UI のライト化やよりコンテンツに集中できる画面設計傾向が見られます。

 

ショートビデオ機能追加!TikTokへの競争が伺える

Snapchat、Instagram などのソーシャルアプリにすでに提供されている今大人気のビデオ共有機能もTencent 傘下のメッセンジャーアプリ QQ にだけではなく、今回のリニューアルから、WeChat にも「时刻视频(タイムカプセル)」機能として公開されました。

最大10秒のショートビデオを24時間限定公開で友だちに共有できます。

グローバルでヒットを起こしたショートビデオ共有エンターテイメントアプリ TikTok に対抗する戦略の一環と考えられ、今回のアップデートでも一番注目された機能です。

大きくはInstagramのストーリーズと同じような機能で、ショートビデオ画面の左下に表示されるバブルアイコンをクリックすることでいいね可能、バブルアイコンを長押しすることでさらにコメントが残せます。コメントは投稿者のみに公開されます。

いいねは一人一回のみ、コメントは一人何回でも投稿することができます。ライブサービスのコメントフィード同様に、流れていくアニメーションが提供されます。

また、TikTokを意識してか公式に提供されている音楽から背景音楽を選ぶこともできます。現状公式音楽の数は限られており、今後 Tencent が提供されているミュージックアプリ QQ Music との連携を展開する可能性も考えられます。

カメラフィルターの機能などはなく、シンプルなビデオ共有機能となっており、これからどう進化していくのかが期待されています。

若者向けのサービスとして踏み出した一歩ではありますが、ユーザーの習慣化や定着にはまだまだ時間がかかると思われます。

 

「看一看(トップストーリー > WOW)」友だちが推薦する記事をまとめ読める

記事機能「トップストーリー」は、以前から提供されていましたが、今回のリニューアルでは新たな友だち推薦記事機能がリリースされました。

WeChat内で友だちがいいねやシェアした記事一覧をユーザーに提供しています。

ユーザーが公式アカウントの記事を読んだ後「好看(レコメンド)」をワンクリックすることで記事が自動的に「看一看(トップストーリー)」フィードに追加され、そこから友だちがフィルタリングしてくれた記事を読むことができます。

 
これもまた、TikTokを提供してるバイトダンス社を意識している機能といえるでしょう。

バイトダンス社は、ニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」の提供によって Tencent などの巨大会社を超える勢いでメディアプラットフォームとして成長しました。

「今日頭条(Toutiao)」には、自動レコメンドシステムが人気の機能としてあり、WeChatに今回追加された機能はそれを意識したものでしょう。

 

ユーザーは友だちがレコメンドする記事を読むことで品質の高い記事に出会えるチャンスが増加し、公式メディアアカウントの露出機会もアップされます。

ただし、趣味が違う人のレコメンドも表示されたり、自分がレコメンドした記事が全ての友だちに表示されたりすることで多くのユーザーから批判や制限したいなどの声も上がりました。

ショートビデオ共有機能もレコメンド記事も公開範囲を設定することができないため、会社の人に見られたくないから利用しないと不満を持っている人もたくさんいます。

今後、公開範囲設定機能はビデオ機能や記事機能に提供される可能性が高いと思われます。

 

重要メッセージを絶対逃さない全画面通知アラート機能「强提醒」登場

誰でも重要なメッセージを逃した経験はあると思います。今回追加された「强提醒」では、特定の相手からのメッセージを見逃さない機能が追加されています。

友だちとの個人トーク設定画面から「强提醒」機能をオンに切り替えると、3時間以内に受信するメッセージは強いアラートで通知されます。

 

アカウントが乗っ取られた友だちを助ける

電子決済機能・WeChatPAYなど、様々な個人情報と紐づいているWeChatでは、アカウントの乗っ取りは非常に大きな問題です。
そうしたアカウントの乗っ取り被害に友達があってしまった場合に、友達を助けるために、自分からそのアカウントをフリーズさせる機能が提供されました。

助けてあげたい友だちを選んだ後、友だちが連携していた電話番号・QQ IDあるいは顔を認証することで友だちのアカウントを代わりにフリーズしてあげることが可能。

これらの機能は大きくインターネットでも取り上げられてはいませんが、今後必要となる場面は出てくるでしょう。

 

TikTokの運営会社もメッセンジャーアプリをローンチ。ますます加熱する中国アプリ

年代問わず利用ユーザー数が億級である WeChat は今までメッセージャー新機能の追加を控えていたように見えましたが、今回 バージョン7.0 を起点に若者に向けて新たな一歩を踏み出しました。

一方、急速に成長したTikTokやニュースアプリを運営しているバイトダンス社はエンターテイメントだけではなく、独自のショート動画をクローズな友だち内で共有できるサービス Duoshan(多闪)を1月15日に発表しました。

中国版Snapchatとも言われ、投稿後72時間で削除されるショート動画とメッセンジャー機能を主軸に、リアルな友達とのコミュニケーションを深めるアプリとしてローンチされました。TikTokは世界中に配信されるオープンなプラットフォーム、多閃は友達に限定したクローズドなプラットフォームとして使い分けてもらうのが狙いなようです。

 

2019年以降の中国市場は、WeChat ショートビデオ共有機能をモーメンツ機能のように生活に欠かせないものに定着できる可否はこれからの検証になり、バイトダンスの強い勢いを対面している現状から見るともっと時間がかかるだろうと思われます。

WeChat が若者の流行りに乗っていく傾向は見られ、国民的なサービスとして使いやすさを維持ながら機能増加する工夫を私はすごく楽しみにしています。

 

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たくろ。
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たくろ。

1992年生まれ。中国出身。東京のIT企業でプロダクトの企画ディレクター・マネジメントをやっています。インターネット大好き、UX大事。中国におけるトレンド最前線を独自のセンサーから配信。