2016.8.30

海外では、マッチングアプリや、デーティングアプリを活用して、パートナー探しをする行為は、なんら驚くことではありません。その中でも、「Tinder」(ティンダー)は、世界中で注目を集めているマッチングサービスです。日本においても若年層を中心に、アプリを通じて出会うことに対しての抵抗が薄まってきていることも事実で、マッチングサービスは人気を博しています。

Tinderに費やす時間は、1日平均1時間半

現在世界中で、5000万人ものアクティブユーザーを誇り、ユーザーは、1日に平均11回アプリを起動し、合計で1時間半も時間を費やす、というデータが出ています。

こうしたアクティブさの背景には従来の出会い系とは異なり、位置情報で近くにいる人を検索し、相手に表示されるのが「名前」と「プロフィール画面」のみという使いやすさが関係しています。そして、気に入れば右、気に入らなければ左にスワイプし、マッチングを進めていくという仕組みになっています。
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global web index より
*世界で16−64歳を対象としたチャート

上記のチャートによると、10代、20代のミレニアル世代のユーザーが多く、その中でも、シングルの利用者が多いです。特に、恋人探し目的で利用しているユーザーが半数以上占めています。

Tinderを活用したプロモーション事例

Tinderによれば、全世界のTinderユーザー1日当たりのスワイプ数は、14億回にも上ります。こうしたアクティブさに注目した企業が増え、Tinder内に広告を配信する企業が増えてきたのです。

今回は、Tinderを活用し広告収益を得ている企業をご紹介します。

ドミノピザ
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Sprinklr より

常にユニークなプロモーションを実践するドミノピザが、バレンタインキャンペーンを行いました。内容は、ユーザーが広告を右にスワイプ(LIKE)した場合、フリーピザや割引券を得ることができるという仕組みになっています。

キャンペーンを作り上げたドイツとIris Worldwide(アイリス・ワールドワイド)によれば、このキャンペーンを通して、700組以上の男女がマッチし、20万人以上のソーシャルリーチを獲得しました。
*Iris Worldwideとは、世界に50か所以上オフィスを構えるイノベイティブエージェンシー

バレンタインという、マッチングアプリの使用が多くなる特定のイベントに注目し、プロモーションを仕掛けたことも反響の大きさに比例している理由です。また、Twitterでは、ピザとチーズが恋愛関係中の様な連絡をTinderで取り合っている様子をユーモアを込めて投稿をしています。

ピザ(ソフィー):あなたの仕事は普段つまらないって知ってるの。だけど、あなたにとって私がいつもパーフェクトな相手って知ってるわ。
チーズ:ありがとう。私、こういうのに慣れていなくって。私時々耳が超食べにくいって思うわ。

アムネスティ・インターナショナル (NGO団体)

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AOTW より

アムネスティ・インターナショナルとは、日本にも支部がある、NGO団体です。国際連合との協議資格をもつ、国際的影響力の大きい非政府組織です。今回行っていたプロモーションは女性の権利を強調するものでした。異性のプロフィール写真をスワイプする際に、女性の人生への選択の権利についての広告が定期的に、登場します。

Tinder-Amnesty-profile-pi-008theguardian より 
(あなたは自分のパートナーを選ぶことができます。多くの女性はその選択肢を与えられていません)
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theguardian より 

(あなたのように多くの女性は選択肢を持っていない)

創業者、兼TinderのCEO、Justin Mateen(ジャスティン・マーティン)は、「オーストラリアには、何百人もの若い女性が人権侵害に直面しています。人権侵害の意識を高めるためとして、このような団体とプロモーションが出来て光栄です。」と語っています。

一方で、アムネスティ・インターナショナル、オーストラリアのマーケティングのディレクター、Peter Thomas(ピーター・トーマス)は、「2つの新たなコラボレーションは、多くの聴衆に届き、女性の平等のために、SNSや様々な場所で呼びかけることが、彼女らをサポートする方法の一つである」と、述べています。

NHS(イギリスの国営医療サービス)
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MobileMarketing より

イギリスでは、約7,000人もの臓器移植の待機者リストが存在し、過去10年間で、臓器提供を待っている間に亡くなった方々は、約6,000人以上という数字が発表されています。そこで、NHS(National Health Service)は、若年層のドナー登録者数が減ってきていることや、臓器提供について多くに人の意識を高めるため、ミレニアル世代のユーザーが多いTinderとタッグを組みプロモーションを打ち出しました。

Tinderのヨーロッパ通信のトップ、(Hermione Way)ハーマイオニー・ウェイは、「一人でも多くの命を救うために、NHSと提携を組める事を嬉しく思っています。」と語っています。同時に、「ユーザーがスワイプする事が、ユーザーとNHSとの良好な関係を築く第一歩となるのではないか。」とも述べています。
*NHSは、国民保健サービス – イギリスの国営医療サービス事業

PORSCHE
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Guerrilla Blog より

ドイツの自動車メーカーポルシェも、バレンタインの合わせたプロモーションを行っていました。ドミノピザ同様に、ポルシェもバレンタインデーに特化したプロモーションを実施しました。その内容として、初めの3枚の広告からは、“どれだけ彼女が美しいか”、ということをユーザーに投げかけている写真を投稿しています。しかし、4枚目の写真では「検索するのをやめて。誰もがバレンタインの相手としてポルシェを選びたい」と呼びかける内容になっています。

Calvin Klein

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ファッションブランドのCalvin Kleinが、sexting(セクスティング:性的な内容のテキストメッセージや画像などをSNSで送るという行為)をテーマとし、プロモーションをしました。投稿内容として、1枚目では「愛、欲望と性欲」と記載されています。2,3枚目では、「今何しているの?」や「あなたにとって私はつまらない?」と男女がテキストメッセージを行っています。

さいごに

Tinderを活用しプロモーションを行っている企業は、医療や飲食業界など様々です。日本では、マッチングサービス=出会い系というイメージが根強いことも事実です。

しかし海外では、すでにマッチングサービスに対して社会的に前向きな考えを持っているという点は、今回の企業プロモーションを見ても、分かります。また「出会い」という機会を、ユーモアを込めて表現することも、啓蒙活動の場として表現することも、三者三様企業にとってそれぞれなのです。

Written by
COMPASS編集部
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