バーチャルインフルエンサーと呼ばれる存在が日本でも話題になってはや1年。
今年3月、GUが158cmのバーチャルインフルエンサーを発表。
ユウ(YU)と名付けられた彼女は「体形が近いモデルを参考にしたい」といったGUユーザーの声を参考に、ランダムに選んだ女性200人の身体を計測しその平均データをもとに作成たという。ユウ(YU)は、GUモデルに起用されている中条あやみといった芸能人とともに、GUの商品を着用し、自社の製品をPRしていくだろう。
大手アパレルブランドがバーチャルインフルエンサーを独自で開発するのは国内初のことだが、昨年1月ごろに話題になった日本発の3DCGバーチャルインフルエンサー・imma以来、国内でも何名ものバーチャルインフルエンサーが登場した。
日本発の3DCGバーチャルインスタグラマー・imma.gram
2019年の1月ごろにSNSで話題に。以降、様々なファッションブランドとコラボを行なっている
日本のバーチャルインフルエンサー界を牽引する存在。海外からも注目度が高い。
immaの弟として登場した、plusticboy
2019年11月に登場したimmaの弟的バーチャルインフルエンサー。
K-pop風のイケメンで、若い女性を中心に話題を集める。
バーチャルギャルとして若者を中心に話題を集める葵プリズム
https://www.instagram.com/p/B73N0mLj46r/
奇抜なファッションに身を包み、アイドルのかてぃやYouTuberのフワちゃんなど、若者に人気なインフルエンサーとの撮影や、ティーン向けアパレルブランド・SPINNSとのコラボなどを行う葵プリズムは、Z世代の若者から支持を得ている。
モデルの菅野結以がプロデュースするバーチャルドール・uca
葵プリズムと同じ運営会社が運営する、ucaはモデルの菅野結以がプロデュースを手がけ、
雑誌「LARME」での連載を行うなど、ドーリーな世界観を徹底している。
ハイブランドも着こなす大人な女性・milla_sakurai
2019年9月に登場したバーチャルインフルエンサー・milla_sakuraiは、ルイヴィトンを着こなして登場。
ADDICTIONやバーバリーとコラボするなど、ハイファッションとの相性が良い。
このように、続々と登場している国内のバーチャルインフルエンサー。
2019年7月には、葵プリズムとucaが所属する日本初のバーチャルインフルエンサー事務所「VIM」が誕生。
2020年2月には、PUMAとファッションブランド・SLYのコラボにimmaと弟のplusticboyが起用され、東京都原宿にある東急プラザ「SHELTTER」のファサード一面を飾った。
2020年3月には、コスメブランド・メイベリンの広告にmilla sakuraiが起用され、芸能人やタレントとともに広告に出演。
また、俳優の水嶋ヒロがは2019年10月に自身のバーチャルヒューマンを作成。
水嶋ヒロそっくりのバーチャルヒューマンが日々を送る様子がInstagramには投稿されている。
このように、日本でも盛り上がりを見せるバーチャルインフルエンサー市場。
海外ではどのようなバーチャルインフルエンサーが登場しているのだろうか?
続々と登場する海外のバーチャルインフルエンサー
世界で最も有名なバーチャルインフルエンサー・Lil Miquela(リルミケーラ )
2016年に突如として表れて人気を掻っ攫った19歳のブラジル系アメリカ人のインフルエンサーLil Miquela。
彼女は190万ものフォロワーを抱えておりコメント欄もフォロワーの熱烈なラブコールでにぎわっている。
Lil Miquelaの運営会社であるBrudは、他にもバーチャルインフルエンサーを運営している。
https://www.instagram.com/p/B6_dEYmlCzJ/
(このあたりについては下記のCOMPASSの記事に詳しく書いてあるのでご参考を)
中東初のインフルエンサー・Laila Blue(ライラブルー)
https://www.instagram.com/p/BoYfwUUhfrB/
2018年に設立されたライラブルーは、ドバイを拠点として活動しており、ハーフフレンチ、ハーフレバノン人の特徴を持つ。
世界初のデジタルスーパーモデル・Shudu
2017年に誕生した彼女は、彼女は、 ティファニーやスポーツブランド・Ellesseなどとコラボを行ってきた。
世界初のデジタルスーパーモデルと言われる所以は、3DCGにあり、まるで人間のようにリアルな質感で作られたShuduの3DCGは瞬きを行い、動きを見せる。
また、彼女を運営する会社では他にも何名かのバーチャルインフルエンサーを運営。
彼女たちの所属事務所では、バーチャルモデルのエージェンシーとしての運営を行なっているようだ。
ポップな世界観が魅力のBINXIE
2019年5月に誕生したBINXIEは、これまで紹介したバーチャルインフルエンサーよりもポップな世界観が魅力だ。誕生して1年たらずですでに10万人近くのフォロワーを獲得している。
2019年6月に誕生したalizarexxは、BINXIEの友達として登場した。
彼女たちの運営会社は発表されていないが、Lil Miquelaを運営するBrudではないようだ。
バーチャルインフルエンサー業界を牽引する会社・Brudは著名な投資ファンドから次々と資金調達を実施
Lil Miquelaのアカウントを運営しているのは米国ロサンゼルス拠点のスタートアップBrudはロボットとAI、そしてそれらをメディアに応用することを専門としている企業である。
Brudの創設者は2人おり、1人がスティーブ・アオキやケイティ・ペリーと一緒に働いた経歴もあるDJ Trevor McFrederies氏。そしてもう1人はForbes社が毎年開催する「Forbes 30 Under 30」でコンシューマーテクノロジー分野における30歳未満の優れた起業家として選出されたSara DeCou氏だ。Brudには現在52名の社員が在籍している模様。
2018年5月、BrudはSequoia Capital、BoxGroup、SV Angelら著名な投資ファンドから600万ドル(約6億6000万円)資金調達を実施し、2019年1月にはシリーズBの資金調達を再度実施している。その時点でのBrudの企業評価額は1億2500万ドル(約137億円)にも登り、調達額は非公開だが2000~3000万ドル(約22億~33億円)と報道されている。
Lil Miquelaはプラダ、ディーゼル、シャネル、カルバン・クライン、プロエンザスクーラー、コーチ、バレンシアガなどのハイブランド、さらにはサムスンなど家電メーカーとのコラボもすでに実現させており、間違いなくバーチャルインフルエンサー業界を率いるNo1の存在だ。
プラダとのタイアップ
サムスンとのタイアップ
またLil Miquelaは英国の雑誌デイズド (Dazed)に編集部員として雇用されたり、歌手としての活動を行うなど、インフルエンサーの枠を出た幅広い活動も行なっている。
Lil Miquelaとタイアップを行なったブランド企業はどのような思惑でタイアップしたのだろうか。
Lil Miquelaとタイアップを行なった新興スポーツブランドOutdoor Voices CEOのTyler Haney氏は「私たちは常にテクノロジーを使ってエンゲージメントの高く、そして面白い顧客体験を創造したいと考えています。」とコメントしている。
Lil MiquelaとOutdoor Voiceのタイアップ
Tyler Haney氏は当初Lil MiquelaのInstagramアカウントをプライベートでフォロー。最初はLil Miquelaのことをバーチャルではなく本物の人間だと思っており後々、バーチャルだと知ったそうだ。
Lil Miquelaは本物の人間ではないものの顧客とコミュニケーションを取る上で様々な方法性を実験したいと考えていたため投資家を通じてLil Miquela運営元のBrudにコンタクトを取り、タイアップに至ったようだ。
Tyler Haney氏は当初Lil MiquelaのInstagramアカウントをプライベートでフォロー。最初はLil Miquelaのことをバーチャルではなく本物の人間だと思っており後々、バーチャルだと知ったそうだ。
Lil Miquelaは本物の人間ではないものの顧客とコミュニケーションを取る上で様々な方法性を実験したいと考えていたため投資家を通じてLil Miquela運営元のBrudにコンタクトを取り、タイアップに至ったようだ。
バーニーズ・ニューヨークのコンテンツ部門責任者のMarissa Rosenblum氏はジェネレーションZにアプローチするためにLil Miquelaとタイアップしたと語る。
バーチャル・インフルエンサーであること、本物の人間かどうかはLil Miquelaとタイアップする上で特に重要なことではなかったとも述べており、企業にとってはブランドイメージのコントロールの観点から見てリアルなインフルエンサーを登用するのは一定のリスクを孕んでいる。
バーチャル・インフルエンサーはスキャンダルや不祥事を起こす心配もなくコントロールできるのでブランドイメージを毀損する恐れもない。これも企業からバーチャル・インフルエンサーへの高いニーズが見込まれる理由足り得るだろう。
ブランドが自らのバーチャル・インフルエンサーを持つようになる?
先述したGUの例のように、ブランドが自らのブランドフィロソフィーを反映したバーチャルインフルエンサーを運営するようになるトレンドが起きそうだ。
現在、テックシーンにはAIを活用してリアルな人間を模したなキャラクターを生成するスタートアップが多数存在する。
たとえば今年のCESに参加したイスラエルのスタートアップHour Oneは注目に値する。Hour Oneはリアルな人間を模したキャラクターの映像と音声をAIで生成するサービスを提供している。
Hour Oneのサービスを活用すれば企業はCGIで自社の広報係を生成できる。自社のサービスや商品を広報したい場合に人を起用しスタジオを借りて撮影する必要はなくなる。
またインタラクティブなコミュニケーションを取れるキャラクターを生成できるサービスを提供しているニュージーランドのスタートアップSoul Machineも注目を浴びている。Soul Machineはこれまでに4750万ドル(約52億円)の資金調達をしている。
企業自らがHour OneやSoul Machineのようなサービスを活用してリアルな人間を模したキャラクターを自社で生成してバーチャル・インフルエンサーとして育成する取り組みは今後出て来る可能性もあるだろう。ブランドイメージのコントロールにおいてリスクが少なく管理もしやすい。またコストを抑えることができる。
またBrudの様に人気のバーチャル・インフルエンサーを育成し保有する企業も多数出てくるだろう。
また、先述した水嶋ヒロのように、有名人が自らの分身を生成して活動を代行させる可能性なども有り得るだろう。
現時点ですでに3Dスキャンすることなく過去の映像から分身を生み出すことも可能となっている。
『Fast and Furious 7』は映画制作中に主演のポール・ウォーカーは交通事故で亡くなっているが、CGIによってウォーカー氏を再現して残りのシーンをすべて制作することに成功している。
バーチャルにも、ストーリー性があるかどうかが最も重要
1からバーチャル・インフルエンサーを作る、有名人が分身のキャラクターを作るトレンドは今後も増えていくだろう。
が、そのどちらにせよ根底にストーリーがなければ人を惹きつけることは難しいだろう。
Lil Miquelaが人気を得たのもリアルな世界観、ストーリーが作りこまれているからだ。
オーディエンスを惹きつけるストーリーを作れるかどうかが今後来るバーチャル・インフルエンサーの戦国時代において成否を分けることになりそうだ。