有害コンテンツを規制できていないYouTubeに対し、プラットフォームとしての責任を問う声が上がっている。

YouTuberのローガン・ポール氏が先月31日、自殺願望のある人が行く場所として知られる青木ケ原樹海で自殺者の遺体を撮影した動画を投稿した。遺体の前でジョークを言ったり、笑ったりしたポール氏は世界中から非難された。

「グレーゾーン」ともいえる動画とともに自社広告が表示されれば、ブランドイメージは毀損(きそん)される。「遺体動画」を受けて、YouTubeに広告出稿する企業らはブランドセーフティに関する懸念を表明し、YouTubeは年明け早々対応に追われた。

モラルに欠けた動画を投稿して炎上したポール氏


「問題動画」ほど再生される

YouTubeは視聴数が増えれば増えるほど広告収入が増加するインセンティブ設計であり、「いかに人の関心を奪うか」が重視される。このインセンティブ設計が、YouTuberに「遺体動画」のような動画を投稿させる風潮を生んでいるのではないか。

実は、倫理的に問題のある動画の再生回数は多い傾向にある。ユーザーの関心を引こうとするあまり、一歩間違えれば法律に抵触するような過激な行為を撮影するYouTuberも少なくない。

倫理的な問題をはらむ動画が散見されるのが現状


チェック体制の不備が露見

YouTubeは2017年も、ブランドセーフティ対策に追われていた。

英タイムズは同年2月、自動車大手メルセデスベンツなど大企業のキャンペーン広告が、過激主義者のプロパガンダ動画とともに掲載されていると報道した。これを受け、通信大手のAT&Tやベライゾンをはじめ、多くの大企業が広告掲載を取りやめたという。

タイムズは同年11月にも、半裸に近い子供が寝ている姿を映したセクシュアルな動画のコメント欄に、小児性愛者から卑猥なコメントが多数寄せられていると報道した。ここにも企業広告が掲載されていたことから、同様の事態が起きた。

その後、YouTubeは問題のある有害コンテンツを発見する体制の構築に積極的に取り組んできた。だが今回、十分なチェック体制が整っていなかったことが露見してしまった。

肝心のポール氏は1月24日、「Suicide: Be Here Tomorrow.」と題する動画を投稿した。動画の最後に全米自殺予防ライフラインの電話番号を示して反省する姿を見せたが、「遺体動画」の影響でブランドセーフティに関する懸念は高まりばかりだ。


あなたの会社は大丈夫?

今後は、ポール氏が加入していた人気チャンネルを対象とする広告プログラム「Google Preferred」にもメスが入れられる。また、投稿動画はレビュアーによって全て精査されるという。

YouTubeは米国時間1月16日、広告プログラム「YouTubeパートナープログラム」で収益を受け取る基準を厳格化すると発表した。過去12か月間の総再生時間4000時間以上、チャンネル登録者数1000人以上が基準となる。これには、有害コンテンツに広告が表示されるリスクを引き下げる狙いがある。


YouTubeの新方針で問題に歯止めはかかるかーYouTubeより

 

マス広告でリーチできない層に対して訴求できるYouTubeは、今や企業にとって欠かせないプラットフォームである。一方で、ブランドイメージを毀損するわけにもいかない。

ウェブ広告を出稿する企業のマーケティング部門や宣伝担当者たちは、YouTubeで自社の広告がどう表示されているか、改めて確かめた方がいいだろう。

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森本進也
Post Author

森本進也

ライター。1989年生まれ。IT、経営、マーケティング、金融、バイオ、医療等の領域において海外の最新トレンドを追っている。好きなメディアはTechCrunch、Business Insider、Scientific American。