写真:BAKE提供
焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」で知られるBAKE(ベイク)。そのクリエイティブの秘訣を探るため、チーフクリエイティブディレクターの貞清誠治さんとブランドディレクターの井手口直也さんに話を聞いた。後編となる今回は、新ブランドのスイートポテトパイ専門店「POGG」と、SNS上で話題をさらったBAKE5周年イベントのブランディングについて話を伺った(前編はこちら)。
ペルソナは働く女性の仕事帰り
――BAKEの新ブランド、スイートポテトパイ専門店「POGG」のキーカラーはパープルですね。これはサツマイモをイメージしたのですか。
貞清:そうですね。「アクティブな女性が仕事帰りに買う」というイメージです。バリバリ働いている女の子にほっこりしてほしいなと。とはいえ、BAKEの商品は基本的に年齢のターゲットが広い。若い女性に買っていただくこともあれば、娘にせがまれて買いに来てくれるビジネスマンもいます。もちろん、お孫さんのために買う年配の方もいますよ。
井手口:BAKEは店舗もパッケージも、中性的なイメージを大切にしています。女性だけでなく男性にも買っていただきたいです。
――「POGG」というブランド名はどうやって決めたのですか。
貞清:まずはブランドディレクターが色々言葉をバーっと出して、最後にみんなで考えましたね。芋掘りをイメージして、ポテトをディグる(=掘る)ということで。
井手口:芋の美味しさを再発見して欲しいという意味。味の深掘りのような。
――そして商品、ロゴ、パッケージ、店舗をデザインしていくわけですけど、どうやって進めていくんですか。
貞清:基本、ブランドディレクターに任せています。イニシャルコストの調整に入るくらいで、あまり介入しないです。基本クリエイションチームに任せてもらっているので、ブランドの運営サイドも介入はしてこないですね。
また、BAKEにはマーケティング専門の部署はないのですが、ブランドの運営サイドにマーケターがいます。そういうメンバーがプロモーションを考え、そこにクリエイティブが連動するという感じで。商品開発の担当者にもマーケティング出身がいます。なので、ブランドコンセプトはその人たちがリードして、デザイナーやパティシエたちと作っていきます。
井手口:マーケターの人とも話しながら、ディスカッションしながらやっていくところが他の会社とは違うかもしれませんね。
――POGGでは、どの段階でマーケターとやりとりを始めたのですか。
貞清: 商品開発のときからです。BAKEはそこが特殊なのかもしれません。商品開発のメンバーがマーケティング思考を持って、「食感が鍵になる」、「形は三角形の方がいいのではないか」など試行錯誤しながら、パティシエと一緒に商品を考えてます。
我々はまず、美味しくていいものを作ることをとことん追求するんですね。しかし現実には、美味しいものができてもこの価格だったら売れないよね、というのがたくさんあって頓挫してしまいます。最初から価格を決めて商品製作をしているわけではないんですよ。ローンチするのにスムーズにいく商品はほぼなく、ギリギリまで格闘してますね。
――POGGの店舗デザインでこだわった点はありますか?
貞清:基本的には、小スペースでインパクトを出したいというのが念頭にありました。面積が限られてしまうので表現するところが少ないけど、その中でどれだけインパクトを出せるか。そこをデザイナーと一緒に解決していきました。サツマイモから芋畑を連想して、畑に納屋がある風景がイメージです。それをすごいブラッシュアップさせるとどうなるか。そこでコンテナっていうアイデアに行きついて、「都市型納屋」というイメージで作っていきました。
また、ブラッシュアップの段階で、新宿のルミネという場所も意識しました。「働く女性にほっこりしてほしい」という考えは、ルミネという場所と結構シンクロしているかなと。ブランドカラーのパープルにしても、女性を意識して少しピンクっぽい色を使いました。
擬人化したお菓子のランウェイ
――BAKE5周年のイベントで、各ブランドを擬人化したモデルが登場するPRが話題をさらいました。これはどうやって作ったのですか。
貞清:これはPRチームの企画ですね。BAKEの絶大なるSNSアドバイザー塩谷舞にも入ってもらい、作っていきました。5周年を迎える4月16日の直近でTHE PAFAIRT STANDやPOGGもローンチされたので、会場には全ブランドの商品が並ぶことに。BAKEとしては過去最大のイベントでした。
井手口:今まで、全商品が一堂に会することはなかったですからね。
――クリエイティブチームもがっちり制作に入ったのですか。
貞清:入りました。全体感はPRチームが進めつつ、トータルのディティールはクリエイティブチームが担当するという感じで。
正直、最初はイベントでどんなコンテンツやるの?って感じだったんですよ。BAKEはブランドの集まりでできている会社じゃないですか。イベントのメインコンテンツをどうしようかとなった時のしがらみがとても多く。ギリギリまで考えました。この企画がいきなり出てきて、すごいの考えたなと思いましたね(笑)
井手口:会場を決めたのが1か月半前で、コンテンツを作り始めたのが1か月前でしたね。全商品を集めて、制作を進めていきました。イベントの常套手段でいくと、有名な方に来ていただいて、イベントを盛り上げるというのが多いと思います。しかし、それだとBAKEが5周年という意味と、全ブランドが一緒にいるという意味が薄れてしまう。ブランドをメインにしつつ、コンテンツをどうしようと考えた結果、PRチームが出してきた案でしたね。
BAKE5周年パーティで擬人化した各ブランド(BAKE提供)
――先ほど塩谷さんの名前が出ました。BAKEは塩谷さんが編集長を務めるオウンドメディア「THE BAKE MAGAZINE」も運営されていますよね。オウンドメディアが生む効果も大きいのでしょうか。
貞清:大きいですね。、オウンドメディアはBAKEの裏側やブランドが誕生する背景などを読み物として書いています。ユーザーからBAKEという会社により深く「共感」してもらうことができる、さらには思いの詰まった記事がアーカイブ化していく。オウンドメディアは、単純なブランディングに止まらず、リクルーティングにも相当貢献していると思いますね。
井手口:僕はそれを読んで入った1人です(笑)THE BAKE MAGAZINEを見て、こういう企業なんだと知って。
※塩谷舞:milieu編集長。Webディレクター・PRを経験した後、2015年からフリーランスで執筆・司会業を行う。2015年5月からは、BAKEの展開するオウンドメディア「THE BAKE MAGAZINE」編集長に就任。
――皆さんのクリエイティヴィティがブランドを作り上げているんですね。ありがとうございました!