2019.6.4

Video+Blogの造語で、日常を切り取った動画を、インターネット上にアップするVLOG。
そんなVLOGが、最近日本でも徐々に知名度を上げ始めている。
COMPASSでもこれまで様々な切り口で幾度か取り上げているVLOGを、改めて紐解いてみよう。

※COMPASSでこれまでに取り上げたVLOG・Vloggerに関する記事はこちら

2016年に取り上げた記事。海外で話題のVloggerをご紹介:Youtuberではない、若者に支持されるVlogger(ヴロガー)って一体なに?

中国のショート動画トレンドからVLOGを紐解く記事:VLOGがムーブメントに?!TikTokだけじゃない、中国ショート動画トレンド


小嶋陽菜にinliving。VLOGが日本でも知名度を得つつある。

今年5月。元AKB48でタレントの小嶋陽菜がYoutubeにVLOGをアップするチャンネルを公開したことをTwitterで発表。まだ聞き馴染みない”VLOG”の言葉に、リプライでは「VLOGってどういう意味?」といった質問も溢れてた。

 その後、自身もTwitterで「VLOGは、Video+Blogのことだよ!」と説明するが、まだまだ一般的な認識にはVLOGが至ってないことを思わせる一件。

今年1月には、「一人暮らし女子のルーティーン」と称して女性の日常を切り取った、inlivingチャンネルが話題に。企画や編集にこだわったYoutuberの動画ではない、ナチュラルな編集と内容にTwitterを中心に話題が集まった。

inlivingも自身の動画に”VLOG”というキャプションをつけ、VLOGを意識した編集であることが伺える。

 

VLOGは、ビデオ形式で表現されたブログのことで、1日の様子を映像で切り取ったもの。

もともとアメリカを中心に2005年ごろから人気が高まり、現在では中国でも人気のコンテンツとなっている。

中国ではVlog専用の映像編集アプリなども続々と登場しており、女優やアイドルの日常が垣間見えると人気だ。中国のVLOG事情についてはこちらの記事にまとまっている。
VLOGがムーブメントに?!TikTokだけじゃない、中国ショート動画トレンド

VLOGの特徴としては、Youtuberの企画動画のように手の込んだ内容ではなく、配信者のメイクや料理、カフェでくつろぐなどの日常や、旅行先での特別な1日を長回しで撮影し、10分〜30分ほどに編集されたものが多い。映像にはBGMが流れ、配信者は視聴者に向かって語りかけるなどせず、言葉を発さないものもある。

これがVLOG、という定義は明確にはないが、いくつか動画を見ていくと、こういったものがVLOGと呼ばれるという特徴を掴むことができるだろう。

VLOGの歴史は意外にも古い。1980年代にまで遡る。

そもそも、VLOGという言葉はYoutubeが巨大なプラットフォームになる前から存在していた。

ブログが1997年ごろ、アメリカで登場し、その後2000年代初頭にはインターネット上にVLOGが登場している。

米Wikipediaによると、VLOGの特徴を持った映像の登場は、1980年代にニューヨークのサウスカロライナ州で撮影された映像アーティストのNelson Sullivanの作品があると言われている。

2000年には、最初のVloggerといわれているAdam Kontrasによる旅の様子を写した映像日記が彼のブログに投稿された。このサイトは2019年現在も更新されている。

VLOGという言葉が登場したのは2002年。映画監督のLuuk Bouwmanが、大学卒業後の旅行をビデオ日記として公開したことが始まりと言われている。2004年に映像作家のSteve Garfieldは自身のビデオブログを立ち上げ、「ビデオブログの年」と宣言している。

ここまではYoutubeができる前の話で、各々のブログやサイトによってこれらの映像は公開されていた。

そして2005年、Youtubeが開設されると、VLOGの投稿がYoutubeで始まる。

Youtubeという映像プラットフォーム自体が瞬く間に成長し、それに伴ってVloggerも多く登場した。

2008年には、ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ元大統領も外交で訪れたラテンアメリカでの様子をVLOGとして公開している。

VLOGに関するギネスもあり、アメリカのYoutuberであるCharles Trippyは、日常に関する動画を3000以上投稿したとし、ギネス記録されている。

日本ではまだまだ聞き馴染みのないVLOG・Vloggerだが、アメリカではすでに15年近くインターネットに投稿されてきた動画の一種だ。

Youtuberと大きく違うのは、Youtuberは投稿のプラットフォームをYoutubeに制限しているが、VloggerはTwitterやブログなど、様々なチャネルでVLOGを展開している。Youtubeが規制により使えない中国のVloggerは、動画共有サイトbilibili・YOUKUや、Weiboなどで同じ動画を投稿を行うのがスタンダードなようだ。


企画性よりも物語性。Vloggerとしての可能性は誰でも持っている。

今後日本でもますます増えていきそうなVlogger。そのカテゴリーは非常に細分化されており、家族の日常やカップル、メイクや料理・旅など、無数に存在している。

オートバイに乗って撮影されたVLOGも数多くあり、それらには”motovlog”という別の名前もつけられている。

日常を写しただけのVLOGの魅力は、Youtuberのように練りこまれた企画性ではなく、物語性だ。その人ひとりひとりが持つパーソナルな出来事が映し出されたVLOGは、日頃見ることのできない他人の生活を追体験できる魅力がある。

前述した小嶋陽菜とinlivingにもそうした特徴が表現されており、小嶋陽菜の場合はモデルやタレントという遠い存在である小嶋陽菜の日常が映されており、inlivingには身近にいそうな一人暮らしの女の子の部屋での様子を見ることができる。

ある程度の脚色はあれど、飾らない・日常の姿に、視聴者は物語性や親近感を感じることができるのだ。

例えば、アメリカのYoutuberのRoman Atwoodは、自身のプロポーズからウエディングの様子を1本1時間半の長尺で投稿している。

同じくアメリカで、プロのスクーターとして活躍するTanner Foxは、自身のスケートの動画を毎日VLOGとしてアップしている。日々Youtubeにアップされるスクーターとしての活躍に注目が集まり、いまやチャンネル登録数878万人の人気Vloggerだ。

また、韓国のインフルエンサー・LeeanのVLOGは、自身が旅行で訪れたパリやロンドンの様子を公開している。旅先で様々な場所を訪れたり、料理を食べたりする動画だ。

このように、企画の良さではなく、個人の持つ1日にこそVLOGの魅力がある。

Youtuberのように人を笑わせたり、HOW TOとして教えるものがなくても、個人の日常を切り取ることでVLOGのコンテンツは成り立つのだ。

また、作り込まれた動画に溢れた昨今だからこそ、VLOGのように自然体の動画が好まれる傾向もあるだろう。数年前、自撮りの多かったインスタグラマーや女子高生が、他人の撮った自然体の写真(他撮り)にトレンドが移行していったように、カメラを意識した映像から、そうでない映像への移行も起こり得るだろう。

もちろん、企画や世界観が練り込まれた動画の需要が減るわけではないが、一方では作られてない映像への需要も増えていきそうだ。

今後より増えていきそうな日本のVLOG。自身の持つ物語性にスポットライトを当てて、誰でもVloggerになれる時代もやってくるかもしれない。

 

Written by
前田 沙穂
2019年1月からCOMPASSの全ての記事の企画・編集を行う。フリーライター&アートディレクター。マーケティング,ガールズカルチャー,サブカルチャーを軸に企画・ライティングや、女性アイドルやアーティストのクリエイティブディレクションなどを行う。https://twitter.com/sahohohoho
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